グリースの組成と選び方

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■グリースとはなにか?
グリースとは潤滑剤の中でも液体(オイル)と固体の中間、半固体の潤滑剤のことを指します。
一般的には液体(オイル)と半固体(グリース)が使われることが多いです。



グリースの組成は、ベースになるオイルに添加剤を加えたものを、増ちょう剤というスポンジに染み込ませたイメージです。
グリースはこの増ちょう剤によって大きく性能が変わるため、目的に合わせた増ちょう剤選びが重要です。




■オイル潤滑とグリース潤滑の比較
液体(オイル)とグリースには下記の利点・欠点があり、使用用途・箇所・環境等によって使い分けられます。




■グリースの使用用途と要求性能
①転がり軸受(振動やズレに強い)
②摺動面(付着力が強く流れにくい)
③歯車(斜めに取り付けられても漏れない)
④シール(塵埃の侵入を防ぐ)
⑤止水剤(水の侵入を防ぎつつ潤滑をおこなう)
⑥防錆剤(錆を防ぐ)

といったように、グリースには潤滑以外の性能も求められます。




■ベースオイルの分類
グリースのほとんどはベースオイルから成り立っています。
このベースオイルにも(1)鉱物系(2)合成油系の2種類に分けられます。(2)の合成油系は性能が良い分、価格も高くなります。




■増ちょう剤別にみたグリースの特長
増ちょう剤とは、グリースに5~20%含まれ、グリースの性質を決める重要な要素といいました。各増ちょう剤の違いによる特長の違いがこちらです。




■グリースの基本物性
皆様が潤滑剤を選定する際には各油剤の製品資料(代表性状)をご覧になると思います。ここではグリースに関わる分析項目の意味と調べ方をご紹介します。

「ちょう度」


「ちょう度」とは、グリースの硬さを示す指標で、数字が増えるほど硬くなります。 一般的には0~2号のものが多く、使用用途・箇所・環境(あるいは季節)等によって使い分けられます。製品によっては00号、3号といったちょう度もあります。 硬すぎると付着力が強い代わりに潤滑性能が落ちたり、柔らかすぎると給脂しやすい代わりに高温に耐え切れずに流れでてしまったりしますので注意が必要です。





「滴点」


「滴点(てきてん)」とは、グリースの耐熱性の目安を示す指標で〇度と標記され、これはグリースが高温で液状になり油分が滴下し始める温度のことです。滴点は使用可能温度ではありませんので、余裕を持って選定していただくことをおすすめします。



「離油度」


「離油度」とは、増ちょう剤の油分の保持能力を示す指標で、100℃24時間でどれだけ分離するか(保持した油を少しずつ浸み出させる能力があるか)をあらわします。
離油度が高すぎると油がどんどん浸み出してしまい寿命が短くなり、離油度が低すぎると油が浸み出してこないので潤滑されなくなります。



「酸化安定性」


「酸化安定性」とは、グリースの酸化劣化性を示す指標で、グリースを入れた容器に酸素を圧入し、一定時間後にグリースが酸素を吸収した際の劣化度合(圧力低下)であらわされます。
グリースは高温環境や空気中の酸素と反応して酸化劣化することで、ちょう度変化、変色、滴点変化等の性能劣化が起きる場合があります。



「水洗耐水度」


「水洗耐水度」とは、その名の通りグリースの耐水性を示す指標で、グリースを詰めたベアリングに温水を吹きかけた際の損失量であらわされます。
水を多く使う環境や、屋外で風雨にさらされる建機等で使用する際に耐水性が求められます。



「起動トルク・回転トルク(mN・m)」


「起動トルク・回転トルク(mN・m)」とは、グリースを充填したベアリングを冷やしてから回転させる際の張力(抵抗)であらわされます。起動トルクが低ければ低温始動性(冷えた環境でも動きやすい)が良く、回転トルクが低ければ低温流動性(冷えた環境でもちょう度の変化が少ない=硬くなりにくい)が良いということです。





■グリースの劣化要因と寿命
グリースの劣化要因はベースオイルに起因するもの、増ちょう剤に起因するものがあります。使用グリースの劣化判定は、ちょう度変化が50以上ある場合、滴点変化が20℃以上ある場合が目安です。
使用用途・箇所・環境等によって大きく変わりますので、ご心配な場合は出光の潤滑油分析システム<I-LAS>等で試験を依頼することをおすすめします。




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